標準宅地の見直し
(イ)主要な街路の選定基準とは
主要な街路は、鑑定評価書記載の標準価格を基にその他の街路の路線価を付設する際の基礎となるものである。
そのため、 選定を誤ると状況類似地域間の価格バランス、状況類似地域内のその他の街路の路線価のバランスも崩れる可能性が高くなるので、下記の事項を踏まえながら慎重に行わなければならない。
■当該状況類似地域内において、価格事情及び街路の状況等が標準的で宅地評価の指標となる街路
■地価公示法に基づく標準地(地価公示地)及び国土利用計画法に基づく都道府県基準地(地価調査地)の所在する街路
(2)標準宅地
(ア)標準宅地とは
標準宅地とは、自治体内の地域ごとに、その主要な道路に接し、規模や形状などが標準的な宅地のことである。
つまり、宅地及び鑑定評価において、画地計算法の各種の補正率等の適用がない宅地のことであり、用途・家屋の規模、程度等において主要な街路を代表する標準的な宅地である。
(イ)標準宅地の選定基準とは
A 画地計算法で言う奥行価格補正率が1.0であり、他の各種加算率、補正率の適用がない宅地
及び鑑定評価においても各種の補正率等の適用のない宅地
B 適正な時価の評定に当たって判断を誤らせる要素のない宅地
(a)その主要な街路の属している用途地区の用途と同一用途に供されている宅地
(b)上物である家屋の規模、程度等がその街路で標準的な宅地
2.標準宅地の選定方法
(1)不適正な主要な街路・標準宅地の抽出
(ア)不適正な主要な街路の具体例
■ 価格補正の手法を中心に 幅員4.0m未満(幅員4.0m未満の道路は建築制限がかかる場合があるため)
■ 未舗装
■ 行き止まり
■ 私道等の条件の悪い道路
■ 状況類似地域の中でも極端に端に位置する道路(状況類似地域の中央にあるのが望ましい)
■ 状況類似地域内で極端に条件の良い道路も、状況類似地域内の路線を代表する主要路線としては ふさわしくない
(イ)不適正な標準宅地の具体例
■ 用途地区と現況用途が一致していない土地
■ 不整形地
■ 間口が極端に狭い土地
■ 広大地
■ 奥行が異常に長い土地
(2)標準宅地の見直しにあたっての留意点
主要な街路のデータと標準宅地調書のデータ
主要な街路のデータは、街路の代表値、標準宅地はポイントのデータである為、必ずしも一致していなければならないわけではない。
ただし、各自治体がどのように判断しているのか、また、一致していないデータは何かということを整理する必要がある。
インフレ予想の計測手法の展開:市場ベースのインフレ予想とインフレ予想の期間構造を中心に 安達孔、平木一浩(日本銀行)
インフレ予想(予想物価上昇率)とは、人々のもつ将来のインフレ率に関する予想である。インフレ予想は、企業の価格・賃金設定行動への影響を通して実際のインフレ率に影響を及ぼすほか、名目金利から予想インフレ率を差し引いた実質金利は、投資・消費行動の重要な決定要因の一つである。このように、インフレ予想は物価の安定や金融政策の効果を考えるうえで大きな役割を果たしているため、その動向を把握することは極めて重要である 1 。とくに、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年以降、内外経済が大きめに変動していることを踏まえると、インフレ予想の動向を把握することの重要性は一段と高まっていると考えられる。
インフレ予想は直接観察できないため、サーベイ調査や、物価連動国債などの物価指数に元本等が連動する金融資産の価格をもとに把握されてきた 2 。これと同時に、様々なインフレ予想指標について、その特徴や背後にある期待形成メカニズムに関する研究が進められてきたほか、各指標から基調的なインフレ予想や、その期間構造を推計する手法の開発も進められてきた。これらの研究成果を踏まえ、各種のインフレ予想指標の特徴について理解を深めることは、インフレ予想の動向を正確に把握するために不可欠である。
図1 .日本の様々なインフレ予想指標
サーベイベースのインフレ予想
まず、家計のインフレ予想は、身近な財の価格動向の影響を受けやすいことや、0や5の倍数の回答が多いといったクセがあることが指摘されている 3 。このため、西口ほか(2014)などは、計量的な手法を用いて回答のクセを補正したうえで家計のインフレ予想を抽出する手法を開発している。
最後に、民間エコノミストなどの専門家のインフレ予想は、景気や金融政策に関する専門知識をもとに形成されており、金融政策の変更などに対して、敏感に反応することが知られている( Coibion et al. 2020 )。さらに、専門家のインフレ予想は、他の主体の予想形成にも影響を与えうることが指摘されている( Carroll 2003 )。このため、専門家は価格設定や消費行動の主体ではないものの、そのインフレ予想の動向を把握することは有益である。
図2・3は、サーベイベースのインフレ予想指標の動向を主体別に示している。すなわち、図2(1)は西口ほか(2014)の手法により回答のクセを補正した家計のインフレ予想、図2(2)は企業のインフレ予想、図3は専門家のインフレ予想を示している。これらの図が示すとおり、感染症拡大前の期間では、インフレ予想は主体にかかわらず横ばい圏内で推移した。その後、グローバルな感染症の拡大がみられた2020年春から夏ごろにかけて、企業や専門家のインフレ予想が低下した。一方、家計のインフレ予想については、上昇している国もみられ、日本でも短期年限(今後1年間)で一時的な上昇が観察された( Candia et al. 2020 )。2020年半ば以降、インフレ予想は主体にかかわらず弱含んで推移したが、足もとでは横ばい圏内で推移している。
図2 . 家計と企業のインフレ予想
図3 . 専門家のインフレ予想
市場ベースのインフレ予想
サーベイ調査とは異なるインフレ予想の計測手法として、将来のインフレ率に元本等が連動する金融資産の価格を用いる方法があり、代表例として、名目国債利回りから物価連動国債利回りを引くことで算出されるブレークイーブン・インフレ率(BEI)がある 5 。BEIは、サーベイ指標対比、データ頻度の高さや速報性に優れていることから、広く利用されている。一方、以下で詳述する流動性プレミアムなどの金融資産特有の要因により、BEIが市場参加者のインフレ予想から乖離しうる点に注意を要することが指摘されてきた( Bernanke 2004、Yellen 2015 など)。日本においても、BEIはサーベイベースの指標と比べて低水準で推移しているなど、その動向の評価には留意を要する(図4)。以下、BEIについて詳細な分析を行った平木・平田(2020)にもとづき、市場参加者のインフレ予想の計測について解説する。
図4 .BEIとサーベイベースのインフレ予想指標の比較
図5 .BEIに影響を与える要因
図6 .平木・平田(2020)の手法による推計結果
- 5 インフレスワップと呼ばれる金融派生商品も市場ベースのインフレ予想指標として利用されている。
- 6 米国についての分析は、 Andreasen et al.(2020) を参照。
様々なデータから抽出したインフレ予想指標とその期間構造
これまでみてきた個々のインフレ予想指標の特徴の違いを踏まえると、個々の指標を単体で把握するだけでなく、様々な指標に共通する基調的なインフレ予想の動向を捉えることも重要である。このような問題意識から、FRB(米国連邦準備制度理事会)などでは、様々なインフレ予想指標から単一の基調的なインフレ予想を抽出する手法の開発が進められている 7 。日本における同様の手法としては、西野ほか(2016)による合成予想物価上昇率がある。この手法は、家計・企業・専門家のインフレ予想に共通する変動部分を、主成分分析の手法を用いて抽出し、その第一主成分を、各主体のインフレ予想を合成した基調的なインフレ予想指標とするものである(図7(1))。
図7 .様々なデータからインフレ予想指標を抽出する方法
図8は、推計されたインフレ予想の期間構造を示している。各時点における先行き10 年間のインフレ予想カーブ(灰細線)をみると、米国に関する分析( Crump et al. 2018 など)と同様、ほぼすべての時点において右上がりの期間構造となっていることが分かる。図9は、菅沼・丸山(2019)の手法により推計された短期と長期のインフレ予想の、実績インフレ率の上昇ショックに対する反応を、ベクトル自己回帰モデルを用いて推計した結果である。この分析から、実績インフレ率の上昇ショックは、各年限のインフレ予想を長期間にわたって押し上げていることがわかる。この結果は、日本におけるインフレ予想の形成において、長短いずれの年限についても適合的な期待形成の影響が強いことを示唆している。
土地 基本編
土地の所在している場所により評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。国税庁が毎年7月1日にその年の路線価を発表しています。
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。
路線価方式における土地の価額は、この路線価に地積を乗じて求めますが、角地のように2方向の路線価が 交わった土地の場合は、まず路線価の高い方を正面路線価とし、それに側方路線価や二方路線価の一定割合 を加算して路線価を修正します。
主な画地補正
定められた路線価からその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で 補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
奥行価格補正率
間口狭小補正率
奥行長大補正率
不整形地補正率
倍率方式
倍率方式とは、市町村役場の土地課税台帳に登録された固定資産税評価額に国税局長が
一定の地域ごとに定めた倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいいます。 価格補正の手法を中心に
市街化調整区域の場合、建築を制限する地域のため路線価は付されてなく、この倍率方式 によります。
倍率方式による評価
倍率方式により評価する宅地の価額は、その宅地の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、 価格補正の手法を中心に その地域にある宅地の売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基 として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価します。倍率は次の倍率表により求めます。
地積規模の大きな宅地の評価
①三大都市圏に所在する場合は500㎡、
三大都市圏以外の地域に所在する場合は1,000㎡以上の地積であること
②「普通住宅地区」または「普通商業・併用住宅地区」に所在すること
※倍率地域にある場合は普通住宅地区内に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。 価格補正の手法を中心に
③市街化調整区域以外の地域に所在すること
※市街化調整区域であっても、宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。
④工業専用地域以外に所在すること
※用途地域の定めのない地域に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。
⑤指定容積率が、東京都特別区に所在する場合は300%未満であること 価格補正の手法を中心に
東京都特別区以外の地域に所在する場合は400%未満であること
⑥倍率地域に所在する場合は大規模工場用地に該当しないこと
3.宅地以外の土地の適用について
4.評価方法
(1) 路線価地域に所在する場合
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)
(2) 倍率地域に所在する場合
5.規模格差補正率の計算方法
(1) 三大都市圏に所在する宅地
(2) 価格補正の手法を中心に 三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積規模の大きな宅地に該当するかどうかで、土地の評価額は大きく変わる可能性があります。
上記2番記載の要件のうち、②以降については、その土地の地域性の問題であることが多く、相続人側で何とかできる問題ではないかと思われます。
ただし、要件の①については、1筆のみでの地積で判断するのではなく、1画地での地積で判断することになります。
つまり、「宅地の評価単位」の考え方と大きく関係し、遺産分割の方法により、適用できるかどうかも変わってくる可能性があります。
そのため、誤って相続税を多く払い過ぎないよう、まずは税理士に相談されることをお勧めいたします。
相続税の土地評価方法と評価減
全国の路線価は毎年7月1日に発表されます。一方、相続税申告において適用する路線価は、相続開始日の属する年の数値を利用します。そのため、 1月〜6月の間に相続が発生した場合、7月1日に路線価が発表されるまでその年の路線価は確定せず、申告もできない ということになります。相続税の申告期限は死亡日の翌日から10ヶ月以内のため、1月に相続が発生した場合、路線価が発表されてから4ヶ月以内に申告する必要があります。
路線価の付されていない土地の場合
- 旗状地として評価する方法
- 特定路線価を設定する方法
倍率方式による土地の評価方法
倍率方式による計算式
よく評価減できるケース
自宅が旗状になっている場合
自宅に入るための路線価に面している通路がある敷地を旗竿地と言います。
この旗竿地は、通路があるため、通常の宅地より奥行が長くなり、奥行価格補正によって評価減できます。
また、対象地とかげ地を含めた全体の奥行価格補正率よりも、かげ地部分のみの奥行補正価格率が大きい場合、かげ地と対象地を含めた全体の評価額(奥行価格補正考慮済)からかげ地の評価額を差し引いた評価額(奥行価格補正考慮済)によって求めた路線価格を元に評価を行うことが可能です。これにより、3割以上も減価されることもあります。さらに、通路部分の幅が2m未満の場合、接道要件を満たさず、無道路地に該当し、さらに減価が可能となります。
マンションの地積規模
平成30年1月1日の税制改正によって、要件を満たせばマンションの敷地にも「地積規模の大きな宅地の評価」を適用することが可能になりました。
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価することで評価減が可能になります。
なお、東京都23区内は指定容積率300%以上の場合は適用できないため、通常、タワーマンションは対象外となりますが、中低層のマンションは適用を受けられることもありますので、必ずチェックが必要です。
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