オプション取引とは

相場操縦

相場操縦
「PC01(試作車)」後部のフタを開けると、ロックがかかっている2つの電池が見える。

SPECIAL REPORT スペシャルレポート

水田 孝信

● 経歴
・2002年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。
・2004年同研究科博士課程を中退しスパークス・アセット・マネジメント株式会社入社。
クオンツアナリストなどを経て2010年よりファンドマネージャー。
・2017年度より上席研究員兼務。
・2014年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。
同年より東京大学公共政策大学院非常勤講師。
・2016年度より人工知能学会金融情報学研究会幹事。2019年度より主幹事。

● 受賞歴
・2010年度および2012年度、人工知能学会研究会優秀賞。
・国際学術会議 IEEE Conference Computational
Intelligence for Financial Engineering and Economics 2014
にて3rd place award受賞。
・2020年度、人工知能学会全国大会優秀賞。

なぜそれは不公正取引なのか?

20世紀初頭の株式市場

19世紀末ごろから20世紀初頭にかけて活躍したジェシー・リバモアという伝説的な投機家がいました。彼にまつわる本はいろいろあるのですが、ジャーナリストのエドウィン・ルフェーブルが書いた、基本的にはフィクションで彼をモデルにした小説”Reminiscences of a Stock Operator”*5(以下、この本)が、もっともリバモアの取引手法や心理状況を詳細に記述しているといわれています。この本は人物名や企業名など固有名詞は創作の部分がありますが、具体的な取引戦略がどのようなものだったか知るにはとても良い本です。100年近く前に書かれたこの本は、現在でも、投機家たちの間で必読書として扱われているようです。
この本ではリバモアがマニピュレーター(相場操縦師)を行った事例をいくつかあげています。いずれも1915年からこの本が出版された1923年までのできごとと思われます。米国で本格的に不公正取引の対策が始まったのは1934年*4なので、まさにこれらの取引を平然と行える最後の時代でした。そもそも、相場操縦師なるものが平然と存在していることが、現在では信じられない状況です。しかしながら当時は、相場操縦は投資技術のひとつであると考えられていたようです*3*5。そもそもダメなことだと多くの人が思ってもいなかったのでしょう。

1つ目の事例:相場操縦師の仕事

1つ目の事例を簡単に説明しましょう。リバモアはある日、ある銘柄の売却を手伝って欲しいと頼まれました。頼んできたのはその銘柄のインサイダーの人たちでした。この本にははっきりとは書かれていませんが、つまり、創業者や、創業時の出資者、経営者などでしょう。そのインサイダーの人たちは自分たちの持ち株を売りたいのだけれども、この銘柄の日々の売買があまりにも少なく売れそうにありませんでした。インサイダーの人たちの持ち分は、全部で発行済み株式数の70%にも及んでいました。 相場操縦
現在の感覚で考えれば、売り出しを行って広く買い手を探すといった方法しかないだろうと思われます。しかし、当時の感覚は全く違うのです。当時の常識では、まず初めに、この銘柄を買うのです。インサイダーたちはリバモアに買付資金を差し出し、リバモアは価格が大きく変動するタイミングを見計らって買います。その銘柄が欲しいのではなく価格を動かすのが目的です。この本には「売りと買いを交互に実施するプロセスを繰り返しながら、その間、常に相場を担ぎ上げていかなければならない。」と、はっきり書かれています。
もっと言うならば、リバモアが頼まれたのは売却作業ではありません。「ひと相場作って欲しい」と頼まれたのです。”ひと相場”はつまり、株価が上昇して、かつ、多くの株数を売却できる活況な相場、ということです。相場操縦に他なりません。これが相場操縦師の仕事なのです。

2つ目の事例:少し奇妙な現象

2つ目の事例は、少し奇妙なものを紹介します。やはり、インサイダーの1人に売却するための”相場操縦 ひと相場”を作ることを依頼されたリバモア。1つ目の事例と異なり他にも大株主がいそうだということで、リバモアはあらかじめ調査し、あと3人大株主がいることを見つけました。
”ひと相場”作っている途中でその3人の誰かが売却を始めると”ひと相場”作ることが困難となり、そのインサイダーだけでなく、3人の大株主も損をするとリバモアは考えました。そこで、3人に相場操縦の計画をすなおに打ち明け、”ひと相場”作るまで売らない約束を取り付けました。この3人にとっても、”ひと相場”作ってもらった方が自分たちの利益につながるのです。
その後、リバモアは時間をかけ慎重に相場を分析していました。そんな分析の日々が続いたある日、急にこの銘柄が活況となり大きく上昇したのです。リバモアは何も売買していなかったのですが、”リバモアが相場操縦をしている”という噂が広がっていたのです。リバモアは自身に問い合わせが多く来たため、この噂の存在に気づきました。リバモアはこれをチャンスととらえ、依頼された株数を数日かけてすべて売却しました。”相場操縦している”という噂だけで実際に相場操縦が完了した奇妙な現象が起きてしまったのです。
しかしこの話にはさらなる後日談があります。実はこの噂を流したのは、依頼者以外の3人の大株主のうちの1人だったのです。しかも、実際にはリバモアはまだ買いを入れてないことを察知したその人は、リバモアはここから買ってくると勝手に思い、さらにこの銘柄を買い込んだのです。実際にはリバモアは買わなかったため、”さらなる上昇”は起きず、結局その人は大損をしてしまいました。

3つ目の事例:インサイダー取引に倍返し

3つ目の事例は、バブルの歴史を振り返った本、” Devil Take the Hindmost: A History of Financial Speculation”*3からです。これまでの2つの事例より半世紀ほど前の、1860年代の話です。この時代、鉄道がひかれ始め鉄道株がブームとなっていました。鉄道会社に許認可がでると株価が大きく上昇しました。当時の鉄道への期待は現代では考えられないくらい過剰なもので、鉄道によって「全世界が一つの偉大な家族になり、一つの言語を話し、同じ法則の下で結束し、一つの神を崇める時代が到来するのを見ることができるかもしれない。」という人もいたくらいだそうです*3。
さて、アメリカのある市で路面電車を走らせる認可が出たことにより、鉄道株が軒並み急上昇しました。しかしその後、この認可がそのうち取り消されることを知った市議会議員たちの一部が結託し、大規模にある鉄道株に空売りを仕掛けます。市議会議員という強い立場ゆえに知った、当局公表前の情報を使った空売りであり、今でいうインサイダー取引なわけですが、当時は普通のことだったようです。
しかし、この鉄道株を多く保有していたある投機家はこの動きを察知して、逆に買い占めを始めます。このような非公開での買い占め行為も現在ではできないのですが、当時はこれも普通のことだったようです。買い占めによって、空売りを仕掛けた市議会議員たちは窮地に陥ります。株価が上昇して損をしただけでなく、この投機家がほとんどの株を保有することになったため、空売りした株の買い戻しがでず、借りた株が返せなくなったのです。市議会議員たちはこの投機家の言い値で買い取るしかなくなってしまいました。その言い値は、市場でついていた価格よりもさらに高かったそうで、破産したものもでたとか。まさに、倍返しされてしまったのです。

近代と現代の違い

”良い”市場とは?

市場が提供すべき機能

そもそも市場は何のために存在しているのでしょうか?つまり、社会にどのような機能を提供しているのでしょうか?これについては以前レポート*6に書かせていただきましたが、簡単に言えば、価格発見機能と流動性の供給です。
価格発見機能とは、その株式の適切な価格を見つけることです。そもそも株価とは、企業の価値で決まるべきです。株式をすべて買うと企業を保有することになりますので、株式を買うということは企業の一部を保有することになります。企業の一部を保有するのですから、株価は企業の価値によって決まるべきです。これまでの事例はどうだったでしょうか?企業の価値とは全く関係のない、操縦された価格で、多くの市場参加者が売買してしまっています。価格発見機能が損なわれていたのです。
流動性とは、売買したいときに、価格を大きく動かさずに売買できるかどうかを意味します。流動性が高いと、価格を大きく動かさずに、売買したいときに売買できます。流動性が低ければ、売りたいときに大きく割り引いた価格でしか売れなかったり、買いたいときに大幅に高い値段で買わされたりします。1年まてば適切な値段で売買できる、であれば流動性は低いと言えます。つまり、いつでも、適切な価格で、多くの量を売買できるかどうかが流動性です。
そのため、価格発見機能が機能していないと流動性は意味を持たないことが分かります。いくら多くの売買ができても、価格が発見されていない、適切な価格で売買されていなければ、意味がないのです。そのような状況は流動性があるとは言えません。本当は100円くらいの価値があるものを、「1円でいくらでも買い取りますよ」と言う人があらわれても流動性を供給しているとは言えないですよね。
そのように考えると、これまでの事例は市場が提供すべき機能を全く提供していないことが分かります。市場がこれらの機能を提供できるようにルールが必要なのです

公正でないと取引参加者が集まらない

ずるいとは何か?スポーツの例え話

しかし、この“ずるい”は取引参加者がずるいと感じるかどうかにかかっていて、理論的に決められるものでもありません。何をずるいとするか、ずるいとは何か、みんなはどんなことをずるいと感じるのか、という哲学的な問いが必要になるのです。それがないと公正とは何なのかが決まらないのです。
最初に紹介した経済学者のジョン・マクミランは大著*2において、「フットボールの歴史は市場発展のモデルとなる」として、市場をうまく設計する重要性をサッカーやラグビーのルールの発展を例にして説明しています。
19世紀初頭、まだサッカーとラグビーに分かれる前の”フットボール”は、2つのチームに分かれ、ただボールを敵の陣地に運ぶというゲームでした。ボールに人が集まり、力ずくで奪い合う、そんなゲームだったそうです。体格が良い人だけが活躍でき、それ以外の人は茫然と眺めているだけのゲームだったと述べられています。その後、「一国を統轄する団体であるフットボール協会が1863年に、ラグビー・フットボール連合が1871年に設立され、ルールを制定し」、半ばケンカの延長のようだったゲームが、秩序だった、技術が強調されたゲームへと進化しました。体格がいいだけで勝てるゲームではなくなり、足の速さや、ボールを扱う技術が問われるゲームへと進化したのです。サッカーやラグビーがやって楽しい、見て楽しいものになるためには、適切なルールが必要であったことは自明でしょう。
ここで、”体格がいいだけで有利”はずるいと判断したことになります。体格だけを争うゲームではなく、技術を争うべきだという哲学があったのです。これは理論的に自明というわけではありません。実際、体格だけを争う競技は存在します。そういう競技をやっている人たちにとっては、体格がいいだけで有利になることは、ずるいわけではありません。また、サッカーとラグビーでも温度差はあります。サッカーは接触プレー全般が禁止され、より体格差が有利にならないルールですが、ラグビーはタックルや押し合いなどは許されていて体格が良い方が有利な面が残されています。
サッカーとラグビーはともに、この時からオフサイドのルールがありました。オフサイドは、簡単に言えば、”待ち伏せはずるい”という考え方からできたルールです。ゴール前での待ち伏せを許すと、背が高いことがとても有利となり、足が速いことがあまりメリットにならなくなります。そして、人がフィールド全体に広がらず、見ていて面白くなくなってしまいます。このオフサイドというルールの微調整はその後何度も行われ、21世紀になった現在でも行われています。サッカーでは2005年、オフサイドの比較的大きなルール改定がありました*7。それは、より面白くするため、よりみんなの公平感を得るため、必要な作業なのです。

普遍・不変ではないずるいの基準

例えば、バスケットボールは比較的、背が高い人が有利なことを許容しているスポーツと思います。しかし、バスケットボールはサッカーに比べ時間稼ぎには厳しく、24秒ルールや8秒ルールが設定されています。一方、バスケットボールもサッカーと同様に待ち伏せはずるいと考えていて、体格がいい人が待ち伏せして守ることを行いにくくするために、ノーチャージ・エリアが設定されたりしています*8。
このように、より面白くするため、よりみんなの公平感を得るため、という共通の目標ではあるものの、それを実現するための”何がずるいか”に関してはスポーツごとに違いがあります。また、同じスポーツでも時代によって変わっています。
金融市場においても、何がずるいと考えられているか、それはどういう考え方に基づいているか、考えていきましょう。スポーツの例を見て分かるように、ずるいの基準は普遍・不変ではない訳ですが、例えば、待ち伏せはずるいと考えられることが多い、足が速いのはずるいとは考えられることは少ないなど、より普遍・不変にずるいと考えられているものがあります。そういうものを、金融市場でも探ってみましょう。

立場によって不利がないこと

各規制はこの哲学に基づいている

速いはずるいか?

以前、高速取引(高頻度取引)について書きました*11。このような速い取引をずるいと言う意見があります。この考え方は一理ありますが、広がりを見せていません。高速取引がずるいので取引をやめる人がそこまで多くなかった、というのが”今のところの”結果です。実際、高速取引をセンセーショナルに批判した書籍”フラッシュボーイズ”*12に登場し、実際に存在するIEXという取引所は、高速取引をあえてできなくし高速取引を締め出す工夫をしているのですが、そこまで取引シェアを伸ばせていません*13。なぜでしょうか?
そもそも、ずるいのを認めない理由は、ずるい人がいるとみんなが参加したくなくなり、参加者が減り、市場が提供すべき価格発見機能と流動性の供給ができなくなるからです。しかし、高速取引は、価格発見機能を提供するまでは行かないものの大きく邪魔をしているわけでもなく、流動性は供給をしているとの評価が多く*11、歓迎している取引参加者が多いのでしょう。
また、流動性を供給している高速取引を締め出すと、単純に彼らが供給していた流動性が減少してしまいます。そして、その立場にいないと使えない情報も特にないというのもあります。さらに、高速取引は機材をそろえれば誰でも参入できますし、非難されるほどの利益は出せなくなっていて、適切な水準に収まっているというのもあるでしょう*11。
サッカーに例えれば、とても足が速い選手が現れた、という程度の話でしょうか。
このように高速取引は締め出すべき程ずるいかと言えば、そうでもない、というのが今のところの結論だと思います。しかし、これらは今のところの評価であり、ずるい手法が発明されればこれらの評価は変わるかもしれません。

大人が楽しむ!「はたらくくるま」図鑑 ホンダ&コマツのミニショベルカー編<2>

今回「PC01(試作車)」を試運転したのが神奈川県相模原市にある今井園の主、今井さん。「静かでパワーがあって乗りやすい。排気ガスがないからハウスで使うにもいいね」とニッコリ。

アーム操作から走行までを油圧で行う、油圧ショベルの仕組みと操縦法を紹介!

ホンダの交換式バッテリー「ホンダ・モバイルパワーパック」と電動パワーユニット「eGX」を採用したコマツのマイクロショベル「PC01(試作車)」。写真はニュースリリース時のもの。

ガソリン・エンジンの代わりとなるモーター・ユニットが「eGX」だ。車体の前方に土をかき出す「ブレード」を備える。作業中の車体安定にも利用されている。

2本のレバーでアーム類を自在に操る

バッテリー交換の手順

2021年10月に発表された最新の「モバイルパワーパックe:」。約13kWhの電力を蓄える。

「ホンダ・モバイルパワーパック」の重量は約10㎏。「PC01(試作車)」は2個を使う。

「PC01(試作車)」後部のフタを開けると、ロックがかかっている2つの電池が見える。

電池の飛び出し防止のためのロックレバーを左右に開く。左右ひとつずつ操作してもよい。

ロックが解除されたら、中の「ホンダ・モバイルパワーパック」を引き出して取り替える。

電池を交換したら、左右に開いていたロックレバーを内側に動かして、電池を固定する。

最後にフタをしたらOK!フタには鍵のようなものはない。交換作業は1分ほどで完了した。

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